出願準備の話をする際に、まず、理解しておかなければいけないことは、入学審査において何が評価されるかということでしょう。それを知っておけば効果的な出願準備が可能になります。
入学審査における評価ポイント
スクールによって細かい基準は異なるにしても、どのスクールにおいても共通した入学審査における評価ポイントは以下に挙げるものです。
- 英語力(英語を母国語としない者で英語圏の大学を卒業していない場合のみ)
- 学力
- リーダーとしての資質と実績、そして経営者となりうるポテンシャル
- スクールやプログラムとのフィット
- 海外経験
上記1〜5に関して、説明を加えましょう。
注)以下、大学名の横に括弧書きで書かれたものは、ビジネススクールの通称です。
1. 英語力(留学生のみ)
基本的には、英語力はTOEFL、IELTS等といった試験のスコアとインタビューで評価されます。ご存知の方も多いと思いますが、各校においてTOEFL、IELTS等試験の最低要求点が明示されているケースが多くあります。一般的には、最低点、TOEFL 100点、IELTS 7.0点 が要求されています。しかし、Harvard Business School, INSEAD, University of Cambridge (Judge), University of Chicago (Booth), University of Oxford (Said),などは、更に高いスコアが要求されています。詳しくは各校のWEBサイトでご確認ください。また、多くのMBAプログラムでは、TOEFL、あるいはIELTSのいずれかのスコアを提出するように指示がありますが、アメリカのトップMBAプログラムの中には、IELTSを受け付けていないところもありますので、最低要求点も含め、各プログラムのWEBサイトで確認なさってください。TOEFL、IELTSに関する詳細は各公式サイトでご確認ください。
TOEFL、IELTS等の英語試験以外に英語でのコミュニケーション能力を判断するためにインタビューが行われます。インタビューは、通常出願書類の審査を通過するとインタビューへの招待が通知されるケースが一般的ですが、Dartmouth College (Tuck)やNorthwestern University (Kellogg)のように一部スクールによっては、出願者がインタビューをリクエストすることができる場合もありますので、各プログラムのインタビューの方針 (Interview Policy)を確認なさってください。通常インタビューは、30分程度で、キャンパス、その他指定の場所、あるいはSkypeや電話で行われます。
最近は、エッセイ等を過剰に編集するアドミッションコンサルタントが横行しているために、エッセイの信憑性に疑いが生じていることもあり、インタビューが重視される傾向にあることは否めません。
また、インタビューと併せて、University of Michigan (Ross)やUniversity of Pennsylvania (Wharton) のようにグループディスカションを、そしてIESEのようにケーススタディーを取り入れたり、Northwestern University (Kellogg)やYale University、University of Toronto (Rotman)のようにビデオエッセイを課し、英語コミュニケーションスキルを評価する機会を増やすスクールも出てきています。従って、英語でのコミュニケーション能力の重要性がかつてないほど高まっていると言えるでしょう。
2. 学力
学力は主に大学の成績(最終学歴が大学院の場合には、大学院の成績も含む)とGMAT、あるいは、GREのテストスコアで評価されます。当然のことながら、Master(修士)レベルの学習をする訳ですからそれに対応できるだけの学力があるかが判断されることになります。
大学(大学院)の成績は、出身校に英文の成績証明書を発行してもらい、それを提出します。英文の成績証明書を1通取り寄せ、Grade Point Average (GPA)を算出し、自分がどのようなレベルかを把握しておかれると良いでしょう。(GPAの算出方法)各校で発表している合格者のGPAを確認し、GPAが合格者の平均、あるいはそれ以上であれば、問題はないでしょう。平均以下であれば、GMAT、あるいは、GREでの挽回を目指すべきでしょう。
GMATとGREに関してですが、ほとんどのMBAプログラムがGMAT、あるいは、GREのどちらかのスコアを提出すれば良しとしていますが、稀に、UC Berkeley (Haas,), Carnegie Mellon Univ.(Tepper)、あるいは、Univ. of Southern California (Marshall)のようにGMATの方が望ましいというスクールもあります(2018年11月現在)。一般的には、GMATの方がより多くのビジネススクールが認知していることもあり、GMATで受験準備をされる方が多いですが、GMATとGRE は形式が異なる試験ですので、どちらの方がご自身の能力及びスキルに適した試験であるのかを見極めてから学習を開始した方が良いかもしれません。GMATもGREも元々ネイティブ英語スピーカー向けに開発された試験ですので、高い英語力が必要になります。従って、まずは英語力の底上げを行うためにTOEFL/IELTS対策に取り組み、それらが出願に必要な最低基準に達した段階で、GMAT/GREの学習を開始するというのが理想的かと思います。英語力がある程度高まってきた時点でGMAT/GREどちらの試験に取り組むのかを検討されると良いでしょう。GMAT、GREの詳細は各公式サイトでご確認ください。
稀なケース(MBAプログラムのごく一部)ではありますが、GMATやGRE以外にスクール独自のAdmission Testを受けることができる場合もあります。GMATやGREで思うようなスコアが出ないという場合には、Admission Testの受験を検討されるのも良いでしょう。但し、情報が非常に少ないので、各スクールにどのようなテストであるのかを確認することは必要でしょう。
3.リーダーとしての資質と実績
リーダーとしての資質や実績というのは、ResumeやEssays、そして、インタビュー、推薦状などで評価されます。基本的には、出願時点までのリーダーシップ経験や実績を基にResume、Essaysを作成する訳ですから、大学生時代からこれまでのリーダーシップ経験を振り返っておく必要があります。自分のリーダーシップスタイルはどのようなものであるのか、自分の資質の中でリーダーとして活かせるものはどのようなものであるのか、リーダーシップを発揮したことでグループや組織にどのような良い影響を及ぼすことができたのか、また、リーダーシップを発揮した結果、組織や社会にどのようなインパクトをもたらすことができたのかを整理しておかれると良いでしょう。もし、リーダーシップ経験があまりないという方は、出願までに日頃からリーダーシップを取るように心がける必要があるでしょう。今まではリーダーシップ経験はなかったけれど、MBAプログラムに行った後にリーダーシップを発揮すると言っても、なんの説得力もありません。従って、出願時にご自身のリーダーとしての資質や組織のリーダーとなり得るポテンシャルが示せるように実績を積む必要があります。
欧米のリーダーシップの定義というのは日本で一般的に考えられるものよりも広義なものであり、「あなたが関わったことによって起こせた変化」というものも含まれます。従って、あなたの持つ強みを活かして、変化を起こすことから始めてみてください。そして更には、あなたが所属している組織の欠点や問題点を解決する取り組みを、周囲を巻き込みながら起こせるようになっていかれると良いでしょう。組織の中では若い方だからできないと諦めずに、どうしたら実行できるのかを考えてチャレンジしてみてください。トップMBAプログラムではそういった人材が求められています。
また、キャリアゴールやキャリアビジョンというものをしっかりと持つことも将来のリーダーとしては重要なことです。リーダーとは、自分のビジョンを周囲に理解させ、一緒に実現に向けて取り組むことができる人です。従って、あなたが、組織のリーダー、経営者となった時に何を成し得たいのかを考え、明確なイメージを持っておくことが重要となります。
また、キャリアゴールやビジョンはMBAを修了したら直ぐに取り組み、2、3年以内には成し遂げたいという短期ゴールと10年、15年引いては、自分のキャリアを通して成し遂げたいと思う長期ゴールの2つは少なくとも考えておくようになさってください。キャリアゴールやビジョンというのは、自分がどのような職業やポジションに就きたいかということではなく、その職業やポジションに就いて、何を成し得たいのか、組織、業界、社会にどのようなインパクトを与えたいのかということです。「組織、業界、社会にどのようなインパクトを与えたい」ということがピンとこなければ、「組織、業界、社会をどのように変えたい・改善したい」のかと言い換えても良いかと思います。要するに、組織、業界、社会において自分が変えたいと思うことが何であり、それを変えるためにどのように取り組んでいきたいと思うのかを考えることです。
4. プログラムとのフィット
プログラムとのフィットといってもピンと来ない方も多いことでしょう。更に、それらをどのように示すことができるのかというのもなかなか分かり難いと思います。「プログラムとのフィット」というと、プログラムの一般的なイメージ、例えば、「あのプログラムはチームワーク重視」ということであれば、それにフィットしていることを示すことと考える人も多いと思います。もちろん、それは大事なことですが、それだけではありません。では、他にどのようにプログラムとのフィットを示すべきなのでしょうか?
実はここで重要となるのが、「キャリアゴールの実現のためにMBAプログラムで学ぶことが如何に必要なのか」ということなのです。言い換えれば、キャリアゴールを実現するために、MBAで何を学び、どんな経験をし、何を得たいのかということを明確にすることです。従って、まずはご自身のキャリアゴールを明確にし、その実現のために役立てられる自分が持っているスキル、能力、経験、知識は何かを考え、それら以外に必要なことやもっと伸ばす必要があることはなんであるのかを明確にし、それらの中でMBAプログラムに入学して身に着けられるものが何であるのかを明らかにしていくことが重要です。
次に、各プログラムがそれら「学びたいこと、経験したいこと、得たいこと、伸ばしたいこと」について、どのようなものを提供しているのかを具体的に調べ、それらを明確に示すことで「フィット」を伝えます。要するに、自分のMBAプログラムにおける目的に対して、そのプログラムが提供しているものと如何にマッチ(フィット)しているのかを具体的に伝えるということが重要になります。
このフィット感を伝えるうえで、大事なポイントはどれだけそのプログラムのことを調査したかということになります。多くの方々は各プログラムのWEBサイトを見て情報を収集します。この過程は誰もが行います。しかし、フィットをより具体的に伝えるためには、ここからもう一歩踏み込んだ調査を行う必要があります。
それは、卒業生や在校生、プログラム関係者とコンタクトをし、更に詳しい内容を調査することです。また、一人の卒業生や在校生だけではなく、複数名から話を聞くといことも必要です。一人だけの話では個人の意見に偏った内容にもなりかねません。このような努力をすることは時間も手間も要します。
しかし、それを行うことで、具体的なフィットというものを語れるだけではなく、そういった手間を惜しまずにそのプログラムの情報収集を行うことで、そのプログラムに対する本気度も同時に示すことができます。
入学審査官の立場で考えると、合格させたら入学してくれそうな人を取りたい訳ですから、本気度を示すことが如何に合格につながるのかは理解頂けるかと思います。更に、何よりも複数の卒業生、在校生と話をすることで、MBAプログラムに関する理解が深められ、モチベーションの維持に役立ち、また、彼らと自分とのフィット感も分かりますので、合格後にどのプログラムに入学するかという意思決定においても大いに役立つ情報となることでしょう。
5. 海外経験
海外経験というのは必須ではないですが、トップMBAプログラムの入学審査においてはプラスに評価されると言っても過言ではないでしょう。ビジネスのボーダレス化が当たり前となっている今、国際的な視点、異文化の認識力を持っているリーダーが求められていることは言うまでもありません。
海外経験というと海外留学や海外赴任経験といった長期間での海外経験を思い浮かべがちですが、それら以外にも海外旅行、日本に居ながらにして行なった海外の会社との協働経験も含めて構いません。それらの経験から異文化の違いを認識したり、それらの違いをどのように受け止めることができ、どのように行動することができたのか。また、その経験からどのようなことが学べたのかといったことが表現できることが望ましいです。
以上がMBAプログラムでの入学審査のポイントになりますので、出願までに入学審査においてアピールできるように準備なさってください。
上記を理解されたら、出願計画とスケジュールを具体的に立てていきましょう。「出願計画とスケジュール」のページをお読みください。